高校野球指導者からのQ&A(第1回)

高校野球指導者からのQ&A(第1回)

①野球以外で選手に気を配っていることはありますでしょうか?
(高校野球と大学野球では違うところもあるかと思いますが。)

一番重要だと考えているのは1人ひとりが主体性を持って、意欲的に取り組めるように環境とチームの空気を作る事です。
それが出来たら基本的には「選手の邪魔をしない」事を心掛けています。
選手たちに『気を配れ』と言っている分、自分の感覚では選手たちの何十倍、何百倍も選手たちに気を配っているつもりです。

『気を配る』という事は『相手にエネルギーを伝える事』という一面もあると思います。
それが押しつけではなく指導者の愛情として相手に伝われば、選手の意欲をかき立てる事につながると思います。
『気を配る』=『情熱を配る』とも言えると思います。
指導者が発信するエネルギーが、前向きで力強く明るいものである事が大切だと思います。

気の配り方を間違うと返って選手と指導者の関係がギクシャクするので注意が必要だと思います。
そこは高校でも大学でも同じように指導をしています。
高校でも、大学でも、共通するのは「対人関係」が大切であるという事であり、それがどう構築されていくかが重要だと思います。
時には、師弟関係のやりとりになる事もあるでしょうし、時には同じ目線に立ったやりとりをしなければいけない時もあるでしょう。

また、意欲的に取り組ませる為に一人ひとりが『成長実感』を感じる事ができるような指導、コミュニケーションを心掛けています。

 

②大学野球を続けられる選手に必要な資質とは何か。
高校野球の指導者に対して、選手に育成してもらいたい能力を1つ教えて下さい。

大学野球を続けられる選手に必要な資質としては、絶対に大学野球を続けたいという強烈な意欲が必要だと思います。
さらにより成功につながる要素としては
(1)素直な心、向上心、成功欲を持っている事
(2)バランス、姿勢の良い体型をし、体の柔らかさ、関節の可動域を持っている事。
(3)素直で癖のない体の使い方をしている事
(4)突出した長所を持っている事
育成すべき能力としても(1)~(4)などが挙げられると思います。
私が育成のポイントとして考えている事は、先で伸びる為の物事の考え方を身につけさせる事や、立つ、歩く、走る、動く、捕る、投げる、打つなどの基本動作を身につける事です。
そのために指導者がそれぞれの『基本』とは何かという事を理解し、自分なりの答を持って、それを伝えるための指導力を身につけている事が大切だと思います。

選手が能力を発揮する為にも、又、将来指導する立場になって次の世代に正しい事を伝える為(長期間における好循環を作る為)にも、各分野の基本を身につけさせる事が指導者にとってとても重要な役割ではないでしょうか。

 

③メンタルトレーニングを行っているか?行っているとすれば、どのようなことをしているか?

チームとしては行っていません。その分チームに強く心掛けさせているのは「ライフスキルトレーニング」です。

『ライフスキルトレーニング』…日常生活の中にメンタルトレーニングの要素が無限にある。多くの先生方がおっしゃる「日常生活が大切」の本質がそこにあると思います。
「お風呂に入らなきゃ…。でも眠い…。」
「すぐ起きなきゃ…。あと5分…。」
「掃除しなきゃ…。でも面倒くさい。」
「あいつミスしたな。さぼってるな…。指摘・注意しなきゃいけないけど…。」

日常で起こり得る場面で何を考え、どのような行動を取っているのか。どう行動したら良いのかという答えは、大抵皆がわかると思いますが、実際に、「その時」にどうしているのか?
その場面こそがメンタルトレーニングの絶好の場だと思います。
又、イライラしない。カッとならない。落ち込まない。
常に前向きに考え、行動する。朝早く起きる。「早寝、早起き、朝ごはん」の安定した生活習慣など…。
そういったことを徹底する事が、何ものにも変え難いメンタルトレーニングだと思っています。

くり返しにはなりますがやるべきこと、やったほうがよいことは大抵の人はわかっていると思います。
問題はそれを『すぐ』や『続けて』行動に移せるかどうかが、良い結果を出せるかどうかの分かれ道になると思います。
日常生活のあらゆる場面に『自分との戦い』の場面があり、それこそが最も内容が濃く、本質的に心の最重要部分を鍛えてくれるメンタルトレーニングと言えると思います。
又、指導者としては、選手達をその事に向き合わせる事が大変な作業になると思います。

 

④球場入りした瞬間に「今日は國學院が勝ちそうだな」と思うくらい、チームの雰囲気の良さを感じる事が多い。日頃の生活からの積み重ねであるとは思いますが、こういう雰囲気を作れた要因はなんでしょうか?指示を全部員に徹底させることとは、私がしているつもりでもされていないことが多くあります。國學院の試合や練習を見ていると部員一人ひとりに指示が行き届いているというのを感じます。どのようにして築かれたか?その維持は難しいことではないのか?

(1)雰囲気について
日常から、私も選手たちもプラス思考を徹底しています。そういったものが雰囲気の良さにつながっているのかもしれません。しかし、それが軽率なものであったり、その場だけのものにならないように注意が必要だと思います。表面上の雰囲気の良さを求めすぎてしまい、「本質」を見失わない事が大切だと心掛けています。勝負の本質は厳しいものだと思いますので、その「厳しさ」を十分に認識・理解した上で、どれだけ雰囲気良く(積極的に、前向きに、エネルギッシュに)できるかがポイントになると思います。

その上で、厳しさや追求する姿勢があるけれども、「萎縮」はしないチームの雰囲気作りをしたいと思っています。厳しさと積極性をどう融合させていくかを常に考えています。そのために言葉を選び、言霊、語尾には特に注意しています。『厳しさの追及の仕方』をどうしていくのかが、指導者として重要なことになってくるのではないでしょうか。

(2)指示について
・共感・共通意識の形成
・×言う、聞く→○伝える、理解する➩理解し合う
伝える…部訓、ミーティング(板書、プリント、穴うめ)、ノート交換、声のトーン、言霊、表情、目つき、間の使い方、反復、場所の使い方・設定、場面の作り方など
理解する…感情移入の傾聴、理解してあげようとする思いやりを持つ。理解する事によって適確な指導方法が見えてくる(医者の診断→適確な治療方法)など。
・チームルールは社会に通ずる内容のもの。部独特のものでは全員に理解を得られないと思います。
・私とリーダーの考え方、話し言葉に共通項が増える事が大切(ロボットの言葉ではなく理解、共感の下に)。全部員に対して私が話をした後、どのような流れで選手だけの話の場にバトンを渡すかを考えています。(選手達が考えるようにもっていく。)それが上手くいく事によって選手の中からリーダーが生まれ、選手主体のチームになり、チームが統率されていき、更に私やリーダーの指示が行き届くチームになっていくと思います。

・10回言って分からなければ11回言う。100回言って分からなければ101回言う。根負けしない。気迫で負けない。「良い意味であの人が言ったらやるしかないな。」と思わせる。しかし、あくまでも強制ではなく『理解→納得(共感)→行動』の下に。それを徹底するという指導者の気迫・執念が必要だと思います。
・伝え方を同じ方法同じ言葉で繰り返す時と、改善工夫を凝らす時との使い分け。

 

⑤セレクションで、合格するための基準があったら、差し障りのない範囲で教えていただきたい。

先で伸びる心・体・技かどうか。3つのうち、2つが良くても、どれか1つが欠けていると、その1つが伸びにブレーキをかけている事が多いように思います。その中でも『心』が充実していれば『体・技』の改善する確率は高く、『体・技』がいかに優れていても『心』が成長のブレーキをかける事が多くあると思っています。
・基本的には心体技全てにおいて素直である事。
心体技全てにおいて、ねじれ、歪み、ブレーキが無い状態が好ましいと考えています。
・練習を積極的に行うかどうか。
・困難を乗り越える精神力、行動力がありそうか。
・意欲・向上心・成功欲があるか。
・戦力になりそうな総合力、もしくは突出した技術や能力があるか。
・教えてはできない『良い感覚』を持っている人=センスの良い人=タイミング・間の良い選手
・最終的には、『この選手はいける!』と感じる選手かどうか。

 

⑥何事にも積極性を継続させる術(例)はありますか?

積極性を出させる為には「野球を好きにさせる事」と「グラウンドを自分の成長を実感できる場にする事」が最短距離だと思います。その為の方法は指導者自身が見つけ、実行するしかないのではないでしょうか。
その他には、選手に適切な言葉を適切なタイミングで伝え、モチベーションを高めあげる事だと思います。その人の「やる気スイッチ」がどこなのか?外発的でなく、内発的に動き出すスイッチを入れてあげる事を常に心掛けています。その為に観察・会話などをくり返し、選手の事を把握・理解しなければなりません。
又、積極的にさせたい事を指導者が選手以上に積極的に行うことだと思います。「率先垂範」です。

例)
・指導者が一番にグラウンドに出る。
・自分も動いて汗をかく。
・明るく元気に―表情豊かに、練習中自分から声を出す。選手に話しかける。(しかし、出しすぎないように注意する。主役は選手。そして、日常から選手よりも指導者が明るく元気に立ち振る舞う。)
・家事も妻に言われる前に「自分から」やるようにしています。(これがなかなか難しい…。)
そういった指導者の習慣が選手たちに伝染してくれたら良いなと思います。
・その人の「目標」を認識しておく。目標実現の為のアドバイスで心を動かす。

 

⑦鳥山監督さんは以前高校野球の監督もなさっておられましたが、大学に指導の場が変わって改めて、人間性も含めてこういう高校生は大学でも伸びると感じられたことがあれば教えていただきたいと思います。

素直な物事の考え方をして、強烈なまでの向上心、成功欲を持っている人。
素直な体の使い方をする人。
バランスのいい体型の人。体そのものと使い方が柔らかい人。学習能力がある人。
②、⑤の内容なども参考にして頂けたらと思います。