⑧年々野球の取り組み方や指導法の変化、あるいは学生の気質変化に伴って特に気をつけていることをお伺いしたい。
取り組み方や指導法は「変わって良い面」と「変わってはいけない面」があると思います。『世の中や物事の原理・原則・真理』に通じるチームや指導者の哲学の面は変わりません。(進化・改善することはあります)
その他の面は基本的には、昨年と同じことはしません。『今年は今年のやり方。昨年以上の事。』が基本スタンスです。毎年、チームの状態、選手やチームの気質は変化しますので、例え今年が良い成績でも次の年に同じ事をしようと思ったことはありません。『昨年より今年、今年より来年。』『昨日より今日。今日より明日。』常に進化する事が重要だと思います。この事は常に選手達に話をしています。
その時に、指導者の自分よがりの感性でチームに変化や課題を求めすぎない事が重要ではないでしょうか。目の前で起きている現象、チーム状態、学生の様子、心模様を観察し、正しく把握する。その作業の次に施す手(指導・行動)を決めています。指導者の自己満足の指導にならないように注意しています。私も以前は、自分が勉強したことや、学んだことをすぐに活かそうとおもってしまい、自分の都合、自分のタイミングで指導してしまっていました。その他では、何事も決めつけずに何が起きても何があっても「あり得ることだ」と受け入れる心構えを常に持っておく事は意識しています。
又、基本的な判断基準は、「公的か、私的(個人の損得)か」「善か悪か」において、「公で善」である事。しかし、良いと思った事を『すぐに取り入れる』事が、一般的に良くある事だと思いますが、そこには落とし穴があると思っています。「まずやってみて失敗したら次に考えればいい」という時と、「まだ理解が浅いので、もう少し理解、研究してから」の使い分けは重要だと思います。視野を広くし勉強熱心になって、色々な事を取り入れる事と、「あっちも、こっちも」は違うので注意すべき点だと思います。
⑨高校生が大学野球をやるに当たって、高校時代はどんな指導をし、どんな選手をつくったらよいのか、または大学ではどのような選手が活躍出来るのか、教えてほしい。
②⑤⑦の内容に似ていると思います。その中でも活躍できる選手に当てはまるものは成功欲と成功への執念、そして試合で活躍する為の『野球勘』を持っている事だと思います。
ただ、活躍できるか、できないかを決める要素に関しては高校野球も大学野球も同じではないでしょうか。一番良いのは、心・技・体が強いこと。その中の一つだけ挙げろと言われれば、言うまでもなく「心」。心の強い人が試合でも、チーム作りでも活躍します。
また、どんな選手を作るかという点に関しましては、指導者がどんな選手を作りたいかではなく、「本人がどうなりたいか」「本人がどうしたいのか」が重要です。それを聞き出したり決めさせたりして、それに対して指導者がどうサポート、アプローチ、アドバイス、指導をしていくかが大切なような気がします。そういうやりとりの中で、「その気」にさせてあげる事も重要な事だと思います。
⑩高校3年間みっちり指導を受け、学生それぞれがプライドは勿論、自分の野球観を持って
入学してくると思うが、そのような学生たちの目標を含め、同じ方向を向かせるために苦労
されていることや工夫されていることを教えていただきたい。
(1) 学生達がプライドや野球観を持っていれば、それを聞き出し、認め、私も学ばせてもらいます。
「色々な考え方、野球観」がある訳ですから、やり取り聞き取りから本人の考え方だけでなく、その高校の監督さんの考え方や野球を学ばせて頂く事はありがたい事です。実際に20代の頃は意識して、『高校の監督はどう教えていたの?何て言っていた?』と事あるごとに聞いていました。その上で、100%本人の意見を取り入れる事もありますし、相談しながら進めていく事もあります。基本的には、本人の考え方を言わせたり、私の意見を伝えたりして、意見交換をし、本人が理解、納得して練習にチャレンジするというやり方をしています。
(2) 共通目標や同じ方向を向かせる為には、私の話している内容に一貫性がありひとりでも多くの人間が納得できる内容である事が重要だと思います。(=共感)。そして何度でもそれを伝える事(訴え続ける事)だと思います。
また、伝えっぱなしでなく、伝えた事が理解され、彼らの行動に反映されているかを常に観察する事が重要だと思います。行動に反映されていなければ、自分の指導や伝え方などの『何か』が足りないか間違っているか、もしくは、お互いのやりとりをもう少ししてみるなどと思うべきではないでしょうか。
(3) 國學院大を選んでくれたという感謝の気持ちを私から選手に対して持つ。
國學院大を選んでくれた高校側や選手が、卒業する時に「國學院大を選んでよかった」と思って頂ける指導ができたらと思っています。だからこそ、十分な育成をするための環境(自然環境・物的環境・人的環境)を整えることも大事な監督の仕事だと思っています。そういった4年間の中で、部員一人ひとりに、いかにひとりの人間としての付加価値をつけてあげられるかを考えています。そういう指導者の思いが選手に伝わる事も、チームの統率を生む要因のひとつだと思います。
(4)納得、共感を得られる指導方針の確立と伝達
(5) 〃 〃 目標設定の浸透
(6)4年生の充実した進路先。
…頑張った先には報われる道が待っているという『希望』がある事。
(7)日頃の指導において選手本人達に『成長実感』を与えられるかどうか。
(例)・「監督のアドバイスを実行したらこんなに良くなった。」
(成長実感が生まれたケース)→信頼関係の構築、選手の意欲増幅へ好循環の流れを生む。
・「監督の言う事聞いたって良くならないんだから聞いたって仕方ないよ。」
(成長実感がないケース)→悪循環へ
(8)チームを一丸にするという指導者の強い思い(信念)、気迫。
⑪高校球児に望むこと。高校球児に伝えて欲しいこと。
(1)以前、高校生に話をする機会に恵まれた時に伝えた「高校時代に学ぶべき12の事」
1、自分の人生の主役になる。主体性を持つ。
2、プラス思考を身につける。
3、素直な心を身につける。
4、表裏をなくす。場面、状況において「差」をなくす。
5、挨拶を「自分から」する。全ての行動を「自分から」行う。
6、「すぐに」行動に移す習慣を身につける。
7、感謝の心は言葉と行動で伝える。
8、逆算して物事を考え、行動する習慣を持つ。
9、結果(成功や失敗)から学ぶ習慣を身につける。
10、苦しさが大きければ大きい程、乗り越えた時に得るもの大きい。逆境を楽しむ。逆境や苦難こそ成長のチャンス。
11、人のために、チームのために働く習慣を身につける。
12、正しい体の使い方を身につける。